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ワンヘルス推進事業

ワンヘルスの理念

 ワンヘルスとは人の健康、動物の健康、環境保全は一つという考えのもと、人と動物、そしてそれらを取り巻く環境が直面しているさまざまな課題に対して、医師や獣医師、研究者だけでなく、行政や企業、市民も一緒になって解決していこうという社会活動です。
 ワンヘルスのさまざまな課題に対する取り組みとしては①人と動物の共通感染症対策②薬剤耐性菌対策③環境保護④人と動物との共生社会づくり⑤健康づくり⑥環境と人と動物のより良き関係づくりの6つの柱があります。

ワンヘルスの6つの柱

(1) 人と動物の共通感染症対策

 人に感染する病原体はいま1,400種以上あるといわれています。病原体とは病気を引き起こすウィルスや細菌のことです。病原体を保有する動物から人へ、また人から動物へうつる病気を「人と動物の共通感染症」といいます。その中には新型コロナウィルスをはじめ、新型インフルエンザ、エボラ出血熱など国内外で大きな社会問題となった病気がたくさんあります。
 これらの感染を防ぐには、①感染源(病原体を保有し、人や動物などに感染させることができるもの)②感染経路(くしゃみや咳などの飛沫感染、手に付いたウィルスなどが目や口などから入る接触感染など)③宿主(寄生虫やウィルスなどが寄生、共生される生物)の3つの要因それぞれへの対策が必要です。さらに人、動物、環境それぞれのアプローチによって、人や動物への感染を防ぐことが大切です。

(2) 薬剤耐性菌対策

 「薬剤耐性菌」とは抗菌薬(抗生物質など)が効きにくくなる、あるいは効かなくなった細菌のことです。抗菌薬を過剰に、また不適切に使い続けていると、人の体内にいる複数の細菌のうち、抗菌薬が効く菌は消滅し、薬剤耐性菌が生き残ります。抗菌薬を過剰に使用して問題となった代表的な病気としては結核やマラリアが挙げられ、いま薬剤耐性菌や薬剤耐性性マラリアなどの治療はとても困難になっています。さらに薬剤耐性菌は世界的に増加の一途をたどり、国境を越えて拡散しています。このような現状から、適正な薬剤使用に関して早急に世界的な協力が必要な段階といえます。

(3) 環境保護

 近年のグローバル化や大量の食糧生産は、人や動物にとって貴重な森林や生態系を破壊し、気候変動の一因となっています。
 その一つ、地球の温暖化は熱中症のリスクを高めるだけでなく、豪雨や台風、山火事といったさまざまな災害の原因となり、人だけでなく動植物にも大きな災いをもたらします。このように環境と人と動物の健康は密接につながっています。
 自然環境は、人も含めて多様な生物が生きる場です。良い環境と生物のすみ分けが保たれていてこそ、人や動物の健康が維持されます。健康にとって大切な環境を次の世代に引き継ぐことも忘れてはならないことです。

(4) 人と動物との共生社会作り

 少子高齢社会の中で、犬や猫、鳥、金魚などの愛玩動物は家族の一員として迎えられるケースが増え、伴侶として重要な位置を占めるようになりました。愛玩動物は、現代の高齢者にとっては共に老いていく仲間であり、子どもにとっては社会性を育むトレーナーでもあります。
 人は愛玩動物の健康を守る立場にありますが、逆に愛玩動物は人の健康づくりや生活の質(QOL)の向上に貢献しています。愛玩動物といると笑顔や会話が増える、心が安まるなどの癒やし効果があるといわれており、また犬や猫をなでることでストレスは軽減され、心拍数や血圧が安定するといったデータもあります。このようなことから、愛玩動物は医療や福祉、教育などさまざまな分野で活躍しています。
 一方で、犬や猫への虐待、過剰飼育・繁殖による遺棄や殺処分といった問題も起こっています。
 愛玩動物との関係をより良く保つためには、愛玩動物の重要性を理解し、飼育法を熟知することが求められます。

(5) 健康づくり

 健康は万人の願いです。WHO憲章によると「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされている状態であることをいいます」(日本WHO協会訳)と定義しています。
 これからの健康づくりは、家族や愛玩動物、環境とのつながりを大事にしなければなりません。私たちは人間だけで生きているのではなく、健全な環境の中で、さまざまな動植物の中で健康を維持できているのです。

(6) 環境と人と動物のより良き関係づくり

 環境と人と動物の間には、さまざまな微生物が行き来しています。人や動物に病気をもたらす微生物がいる一方で、人や動物の体に有益な微生物もいます。乳酸菌やビフィズス菌、麹菌などを含む「善玉菌」とよばれる有益な微生物は、悪玉菌が増えるのを抑え、腸内環境を整える働きがあります。この善玉菌なしには人も動物も健康に生きていけません。そして善玉菌は、「食」によって人の体内に入ってきます。
 農畜水産物の生産には多くの人が関わっています。「安全・安心」な食づくりには、農畜水産物の生産状況が直接確認できる地元で生産することと、これを支えるさまざまな生業(なりわい)や職業を持続させることが大事です。そして「何を食べるのか」「何を食べてはいけないのか」を学ぶ「食育」の推進も不可欠です。

日本獣医師会におけるワンヘルスへの取り組み

 日本獣医師会では以前からワンヘルスの理念に注目し2010年、活動指針に「動物と人の健康は一つ。そしてそれは地球の願い。」を制定しました。また2013年11月には日本医師会とワンヘルスに基づく学術協力の推進に関する協定書を取り交わし、2016年までに全国55の地方獣医師会すべてが地方医師会と同様の協定を締結しました。

新潟県獣医師会におけるワンヘルスへの取り組み

 新潟県医師会と新潟県獣医師会(以下、本会)は、2015年10月にワンヘルスに基づく学術協力の推進に関する協定書を取り交わしました。その後、本会は講習会の情報を新潟県医師会と共有するなど、ワンヘルスへの取り組みを始めました。
 さらに本会は2021年10月に、ワンヘルス推進委員会を設置しました。また、ワンヘルスを確実に推進するため、「ワンヘルス推進事業」を創設し、これから安全で安心な社会形成に寄与していきます。

ワンヘルスに関する情報(リンク集)

厚生労働省(One Healthの取り組み)
厚生労働省(ワンヘルス・アプローチに基づく動物由来感染症対策)
厚生労働省(薬剤耐性対策について)
農林水産省(動物に使用する抗菌性物質について)
農林水産省 動物医薬品研究所(薬剤耐性菌への対応)
福岡県(動物と人の健康は一つ。そして、それは地球の願い。-“One Health”-)
福岡県(ワンへルス ”One Health”~人と動物の健康はひとつ。そして、それは地球の願い~)
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